福岡市議会議員・山口つよし

2016.3.23:平成28年条例予算特別委員会

◯山口委員 公明党福岡市議団を代表して地方公会計方式の変更と貸付金について、農業所得と6次産業化について質問する。地方公会計方式については、平成18年に東京都が複式簿記に会計制度を見直してからようやく平成27年1月の総務大臣通知により、全ての地方公共団体に対して固定資産台帳の整備と複式簿記の導入で公会計の全国統一的な基準による財務書類を作成することへ動き始めた。総務省の発表で、平成27年12月には財務書類作成機能としてこれまでの現金主義、単式簿記のデータを取り込んで企業会計方式のように発生主義、複式簿記のデータに変換するソフトウエアを各地方自治体に供給すると27年度当初発表されたが、現状はどのようになっているのか。また、本市におけるソフトウエアの活用状況はどうか。
△財政局長 統一的な基準による地方公会計の整備、促進のため、国は27年度に3つの機能を備えた標準的なソフトウエアを開発し、地方公共団体に提供する予定となっており、本市においては、ソフトウエアの活用可能性の確認などを行っているところである。
◯山口委員 これらの財務ソフトウエアは国の総務省からダウンロードする仕組みのようだが、本市ではまだソフトウエアの利用が始まっておらず、早く取り組みを開始するよう要望する。また、複数の提示があるようだが、本市にとって一番関心があるのが財務書類作成のためのソフトウエア、つまり単式簿記、現金主義から複式簿記、発生主義に変更される点だと考えるが、変更作業はどのようになるのか。また、国が定める期限及び本市の対応についても尋ねる。
△財政局長 国からは、統一的な基準による財務書類等を原則として29年度までに全ての地方公共団体において作成することが求められている。本市においては、29年度までに財務書類等を作成できるよう、固定資産台帳の整備などを進めていく。
◯山口委員 財務書類の作成に欠かせないものとして固定資産台帳の整備があるが、本市の公有財産台帳については、変換ソフトウエアを使えば機械的に作業が済むのか。
△財政局長 固定資産台帳の整備に向け、公有財産台帳において管理している情報に加え、各局等が保有している情報を集約する必要があるため、現在、各局等が保有している資産情報の集約、整理等を行っているところである。
◯山口委員 一部で手入力も必要になると聞いており、作業がふえるとの印象を受けるが、本市決算の財務書類について、新会計方式による公表はいつから始まるのか。
△財政局長 28年度の決算について、29年度に財務書類を作成し、公表していきたい。
◯山口委員 この会計方式の変更では、これまで人件費や減価償却費がわかりにくかったことから、各事業に係る予算説明資料について事業別にフルコストを表示したアニュアルレポートを作成するよう国は求めているが、本市はどう取り組むのか、また、どのくらいの事業数をいつの時点から公表できるのか。
△財政局長 国は、統一的な基準による地方公会計の整備を進めるに当たり、例えばアニュアルレポートの作成などにより財務書類等の活用を推奨していると承知している。本市においては、財務書類等を作成するとともに、財務書類等から得られるデータを公共施設のマネジメントに活用することなどについて検討していきたい。
◯山口委員 ぜひアニュアルレポートを活用されたい。次に、貸付金について質問する。会計室で扱われている口座について、わかりやすくするために各家庭で使う預金通帳に言いかえて説明を求めるが、一般会計や特別会計の出入金はどのように行われているのか、また、別々に預金通帳口座があるのか。
△会計管理者 本市においては、会計管理者が一般会計と特別会計を1つの当座預金口座でお金の出し入れを管理しており、これが各家庭で使う預金口座に当たる。会計管理者はこの当座預金口座において一般会計及び特別会計の収入や支出を一体的に管理している。
◯山口委員 企業会計だけは別口で各所管局が管理しているため、例えば、水道事業会計から一般会計へ年度途中に貸し出されることがあると聞いているが、特別会計から一般会計に貸し出されることはないのか。
△会計管理者 会計管理者は一般会計と特別会計を同一の当座預金口座で管理しているものの、一般会計と特別会計は別々に収支の管理を行っており、一般会計と特別会計において歳計現金に過不足がある場合は、会計管理者の責任で相互に補っている。
◯山口委員 4分の1四半期、つまり今からだと6月末までの期間に資金不足に陥った場合は借り入れていると聞いたが、どのくらいの現金が不足しているのか、あわせて、借り入れる金利についても示されたい。
△財政局長 平成27年6月末時点における資金不足額は約650億円となっており、借入金利は東京銀行間取引金利をベースに設定している。
◯山口委員 650億円の資金が不足しているのが本市の実態であり、民間では破綻に近い状況である。本市の場合は翌月以降に国の地方交付税等で補填されるとはいえ、マイナスを少しでも小さくする必要がある。28年度予算の一般会計21区分の貸付金1,085億円のうち上位5事業を示されたい。
△財政局長 28年度一般会計予算案における貸付金については、大きい順に、商工金融資金貸付金約889億円、高速鉄道事業貸付金95億円、公益財団法人福岡市教育振興会貸付金約61億円、水産業金融資金貸付金約16億円、福岡市漁業協同組合貸付金10億円となっている。
◯山口委員 交通局所管の高速鉄道事業貸付金95億円について、ここ5年間は同じ金額が計上されているが、なぜ同じ金額が毎年続いているのか。また、この95億円はいつから続き、過去に金額の変動がなかったのか尋ねる。
△交通事業管理者 高速鉄道事業については、巨額の建設費を必要とし、その財源として借り入れた企業債の元利償還金が多額となることなどから構造的に資金不足が生じており、一般会計から無利子の短期貸し付けを受けている。貸付金の額については、一般会計及び高速鉄道事業会計の財政状況などを踏まえて財政局と協議の上決定しており、5~12年度までは65億円、13~23年度までが85億円、24年度以降は95億円を借り入れている。
◯山口委員 主にどのような用途に貸付金を使用しているのか。
△交通事業管理者 高速鉄道事業は年間を通じて資金不足にあるため、一般会計からの短期貸付金については、運転資金として資金不足額の補填に充当している。
◯山口委員 高速鉄道事業会計も一般会計もマイナスになるため、無利息で貸し付けても同じ結果になると思うが、さらに一般会計からの貸付金であるため、年度末の交通事業会計からの清算については新年度への引き継ぎはどのようになっているのか、また、貸付金の元金はどのように返還されるのか。あわせて、借入利率についても示されたい。
△交通事業管理者 一般会計からの貸付金は短期の貸付金であり、年度内に返還する必要があるため、3月31日に金融機関から一時借り入れを行って返還している。借入利率については、一般会計において金融機関から一時借り入れを行う場合と同程度の利率で借り入れを行っている。
◯山口委員 このように、旧年度末と新年度初日に一度、一般会計に返還して、再度借りるために金利を払って借りかえることは本当にもったいないことである。1日でも利息が数十万円になると聞いており、公会計制度が変更されればこのような利息が発生しなくても済むと考えるが、どうか。
△財政局長 国によると、統一的な基準による地方公会計は、現行の現金主義会計を補完するものであり、現行の予算決算制度については引き続き現金主義に基づいてなされることとされており、会計年度及びその独立の原則を定めた地方自治法の改正は予定されていないことなどから、現行の取り扱いが変わるものではないと認識している。
◯山口委員 現行の制度は変わらないとのことであるが、ここは知恵を使わなければいけないのではないか。交通局の企業会計は黒字まで何十年もかかると理解しており、本市の大動脈を守る観点からも、支出を適宜見直し、利用者が気持ちよく乗車できるよう、これからも改善をお願いしたい。また、この貸付金のうち、これまでも毎年、第1位が商工金融資金となっており、預託金であるため実際は金利負担分の出資であるが、この3年間の予算と決算における執行率を示されたい。
△経済観光文化局長 商工金融資金に係る預託金の予算の執行率は、25年度が95.0%、26年度が94.4%となっており、27年度については決算見込みで93.6%となっている。なお、毎年、5~6%程度の未執行分があるが、これは、経済環境の急変により緊急に資金を創設する場合などに活用する予算枠として確保しているものである。
◯山口委員 預託金については、これまで4月当初に緊急のための枠を残して一括して預託されているようだが、例えば、新規に予想される貸付金額に相当するものとして889億円のうち100億円でも半年後にずらすことができないか。
△経済観光文化局長 商工金融資金に係る預託金については、融資の原資に充てるため金融機関に預託をしているものであり、融資の残高に応じた額を年間を通じて預けておく必要がある。一方で、商工金融資金の融資は、多くの市内中小企業者が利用しており、預託の対象となる融資残高については、毎月数百件の新規貸し付けと返済が繰り返され、ほぼ一定の残高が年間を通して継続している状況である。このため、預託金の一部を半年分ずらして預けることは、そのずらした期間において本来必要な預託金が確保できず、融資の原資が不足することとなるため、困難である。
◯山口委員 一般会計の不足現金分を6月末に借り入れる金利負担だけでも大きな金額になるため、商工金融資金の預託金を少しでも時期をずらすことが可能であれば余裕ができるのではないかと考えるが、所見を尋ねる。
△財政局長 預託時期を繰り延べることができると仮定した場合には、繰り延べた期間において資金の需要が減少することになる。
◯山口委員 商工金融資金の予算額については、25年度は1,107億円、26年度は1,044億円、27年度は962億円、28年度は889億円というように総額で減少しており、県の信用保証協会も努力すれば総額が減ると考えられるため、本市中小企業の安定化資金として、これからも関係者と協議を行うよう要望しておく。次に、母子父子寡婦福祉資金貸付金について、この貸付金は、特別会計を組むように国から指示があっている。貸付金の余裕があれば一般会計に貸し出しができないものかと考えていたが、同じ財布ということで、現金的には一般会計と同じく運用されているようである。この貸付金の執行率を示されたい。
△こども未来局長 26年度の執行率は、13億1,900万円の予算額に対して38.1%となっている。
◯山口委員 38.1%という執行率は本当に低いとの印象を受けるが、この資金の相談件数はどのくらいか。また、申し込みから融資の実施に至った全体の件数と返済方法について示されたい。
△こども未来局長 26年度の相談件数は延べ4,496件で、貸付件数については1,195件である。また、返済方法については、資金種別ごとに国の施行令で定められており、最も長いものが修学資金などの20年以内、最も短いものが転宅資金の3年以内での元利均等償還となっている。
◯山口委員 貸付金の中身について、どの資金の種類が多いのか、また、利用がない種類についてはどのような理由によるのか。
△こども未来局長 貸付金の種類については、母子及び父子並びに寡婦福祉法、同法施行令で12種類に定められているが、26年度の実績では修学資金が898件、就学支度資金が265件、合計で1,163件となっており、学費関係の2資金で全体の97.3%を占めている。また、利用がなかった資金については、医療介護資金や住宅資金などの5種類であり、他の貸付制度や給付制度を利用したことが主な理由と考えている。
◯山口委員 利用者が制度の中身を知らないため利用率が低いのではないかという意見も国会で議論されている。国の母子自立支援策として、子育て生活支援、就業支援、養育費の確保、経済的支援という4本の柱があり、その中で貸付金の内容を見ると、修学資金の貸し付けが特に多い状況であるが、申込窓口の対応として奨学金や就学援助など融資の案内がなされているのか。
△こども未来局長 修学資金は高校以上に進学する児童を対象としていることから、その申し込みの際には小中学生を対象とした就学援助の案内は行っていないが、日本学生支援機構や社会福祉協議会などの奨学金についてはあわせて案内している。
◯山口委員 母子世帯の総数は、児童扶養手当を支給している世帯で見ると約1万4,000世帯で、父子世帯は約700世帯未満となっている。相談件数では、毎年4,000件を超える相談があり、27年3月末での貸付件数は母子、父子、寡婦を合計して1,195件、28年2月末の速報値では合計で957件ある。この資金を必要としている家庭があるため、窓口での受け付け時から決定、実際の融資までの期間を短くして使いやすい制度にしてもらいたいと思うが、所見を尋ねる。
△こども未来局長 これまで就学支度資金の申請受け付けを合格発表後としていたが、27年度から高校の推薦内定時の申請受け付けを可能にするなど、少しでも早く貸し付けできるよう改めたところである。今後とも申請者にとって使いやすい制度となるよう改善に努める。
◯山口委員 ある専門家は、日本の高校教育は家計に無理を強いることで支えられていると述べているが、同感である。これからの生活をよりよい方向にしていくために、相談者の声を一番聞いているのが現場対応の職員であり、特に担当職員からの声をしっかり聞き、今後取り組まれたい。次に、水産業金融資金と農林業金融資金について、それぞれの27年度予算額と執行率及び28年度予算額を示されたい。
△農林水産局長 水産業金融資金の27年度予算額は15億9,400万円、執行率は17%、28年度予算額も同額であり、農林業金融資金の27年度予算額は7億9,300万円、執行率は4%、28年度予算額も同額である。
◯山口委員 随分低い執行率であるが、当初予算編成時の見込みとどのように違うのか。借りにくい状況があるのか、または需要がないのか。
△農林水産局長 執行率が低いことを考慮して、より利用しやすいようにするため、水産業金融資金については、24年度より無担保無保証人型の融資を導入し、また、農林業金融資金については、25年度より融資利率の引き下げや融資限度額の引き上げなどの改正を行ってきたが、水産業、農林業ともに高齢化や後継者不足などにより新たな施設整備などへの資金需要が高まっていないことから、執行率は改善されない状態が続いている。
◯山口委員 融資資金の予算と乖離している執行率について、何か手だてを考えているのか。
△農林水産局長 水産業金融資金の予算額については、執行率を勘案して、26年度の予算額23億6,400万円を27年度は15億9,400万円に減額し、農林業金融資金の予算額については、26年度の予算額12億4,000万円を平成27年度は7億9,300万円に減額したところである。水産業、農林業ともに生産資材価格の高騰や台風等の災害、天候の状況など、経済情勢や自然の影響を受けやすい産業であるため、セーフティーネットとして一定規模の予算を確保しておく必要があることを踏まえるとともに、執行率も勘案しながら、適正な予算額となるよう努めていく。
◯山口委員 予算の執行率が1桁台ということに対しては非常に疑問を感じる。また、この水産業金融資金と農林業金融資金は財布が一緒であるため、現金の流れとしては一般会計と同じである。財政局としては何も課題がないという認識かもしれないが、予算書や決算書にこのような低い執行率が示されている以上、何か手だてを考えるべきである。農林水産局内で他の事業予算として組みかえるなど活用はできないのか。
△財政局長 水産業金融資金及び農林業金融資金については、予算上、年度当初の貸付金の歳出を年度末の償還金の歳入で賄う仕組みとなっているため、仮に貸付金の歳出予算を縮減するとした場合、その特定財源である償還金の歳入予算も縮減することになるため、ほかの事業の予算として活用できる財源が生じるものではないと認識している。
◯山口委員 有効活用や局の枠予算が使えないとは本当に残念であり、農林水産局の予算全体を見ても、この2つの金融資金がなければ局自体の予算は非常に小規模なものである。各局が一般会計に戻すために金融機関から借り入れる総額と利息額、利率について示されたい。
△財政局長 一般会計から企業会計の貸し付けについては、26年度の高速鉄道事業貸付金95億円を一般会計に償還するために、高速鉄道事業会計が借り入れを行った金融機関に対して約16万円の利息を支払っている。本市の一般会計から他団体への貸し付けについては、当該貸付金を本市に償還する際に、それぞれの団体において資金を調達している。
◯山口委員 各団体の資金調達について、全体の利息がわかるよう努められたい。複式簿記の導入や固定資産台帳の整備など、会計基準が変わると各種事業で見える化が進むのではないかと期待している。特に今回、貸付金について質問を行ったが、単年度会計であるために年度末に借りかえの利息を支払っていることが、これまでは隠れて見えなかったが、今後、事業単位で作成するアニュアルレポートが有効になると期待している。さらに、単月に不足する資金の借り入れも少なくできる取り組みや、外郭団体への各局からの貸し付けを含めた見直しが必要と考えるが、統一的な会計基準の変更について、本市では今後どのように活用するのか。
△財政局長 国においては、財務書類の作成に関する統一的な基準を設定することにより、各地方公共団体における固定資産台帳の整備や各地方公共団体間の比較可能性の確保を図りつつ、財務書類等の活用による各地方公共団体の財政のマネジメント強化などを促進していると認識している。本市においては、この趣旨を踏まえて、統一的な基準による財務書類等を29年度までに作成できるよう固定資産台帳の整備を進めるとともに、財務書類等から得られるデータの公共施設のマネジメントへの活用などについても検討を進め、統一的な基準による地方公会計を有意義に活用できるよう取り組んでいきたい。
◯山口委員 次に、農業所得と6次産業化について、まず、農家の所得について尋ねる。28年度当初予算説明資料の中に、「1戸当たり農業所得(試算)」と「農業所得実態調査」という記載があり、26年平均で見ると、専業農家は294万円余で、第1種兼業農家は202万円余とあるが、この数値について、当局はどのように分析しているのか。
△農林水産局長 農家所得については、27年度に農家600戸を抽出して実態調査を行ったところ、専業農家においては平均で約294万円、第1種兼業農家で約202万円という結果であった。これは他産業の平均所得から見ると低い水準にあるため、農業後継者や新規就農者の増加を図り、農業を活性化していくためには所得の向上が課題であると認識している。
◯山口委員 農業所得について、農林水産局としては専業農家1戸当たりの所得目標を幾らに設定しているのか。また、今回の農家所得実態調査の中で最高の所得額は幾らで、何を栽培しているのか。
△農林水産局長 専業農家の所得の目標設定はしていないが、本市の中核的な農業の担い手と位置づけている認定農業者の所得目標は年間470万円程度と設定している。また、今回の調査での所得の最高額は約1,400万円で、栽培品目は大根とカブである。
◯山口委員 所得額については、答弁で示された金額の3倍に相当するほどの高い額を得ている人もいると知人から聞いたことがあるが、いずれにしても、所得目標達成についてはさらに上を目指して頑張ってもらいたい。現在の農業従事者の収入は、一概に農業所得だけでははかれないのも事実である。中には土地活用によるアパート経営などを含めて生計を立てている人もいると想像するが、農業所得が低いと、若者が夢を持って就労することができないため、ここに行政が支援を行う意味があると考えており、知恵の出しどころでもある。本市の農業の現状について、五、六年前から本格的に取り組んでいる耕作放棄地対策に関連して、耕作放棄地面積の推移及び全国との比較を示されたい。
△農林水産局長 耕作放棄地の面積の推移については、全国では、23年度が約25万1,000ヘクタール、26年度は約27万3,000ヘクタールとなっており、増加傾向にある。本市においては、23年度が464ヘクタール、26年度は392ヘクタールとなっており、減少傾向にある。
◯山口委員 耕作放棄地を減少させていることは非常によいことであり、今後も期待している。次に、農業体験農園を本市でも取り入れてはどうかと平成19年に練馬区の例を参考に提案したが、現在はどのようになっているのか。事業主数、区画数、利用状況などを示されたい。
△農林水産局長 本市における農業体験農園については、21年度に東区勝馬と南区的場の合計2カ所で開設している。東区勝馬では60区画、南区的場では50区画を整備しており、現在、両農園ともに全ての区画が利用されている。
◯山口委員 当該農園がいまだ2カ所しかないのは、少ないのではないかと述べておく。6年が経過したが、その間、新規の開設がない。農家にとって素人に教えることは大変だとは思うが、利用者にとっては普通の市民農園よりも格段の成果物があり、また、事業主にとっても、収入増などさまざまな特典があることをもっとアピールして広められないか。
△農林水産局長 農業体験農園については、園主に幅広い技術と知識が求められることや、利用者への指導などの大きな負担があることから、2カ所の設置にとどまっているが、農作業における園主のきめ細やかな指導が得られ、深く農業に親しむことができ、市民の農業への理解や農家の収入にも大きく寄与するなど、さまざまなメリットがあるため、農業体験農園を拡大できるよう、JAの広報誌や市のホームページなどを活用し、周知に努めていく。
◯山口委員 次に、就労について、経営主の平均年齢が70歳を超えた現在、若い世代に引き継がなければ衰退産業になってしまうため、子孫や親戚だけではなく、農家以外からも参入できる環境をつくらなければならないと考える。農林水産局としてこれまでチャレンジ事業など新規参入施策を実施しているが、何人が新規に就労しているのか。また、新規就農者は主に何を栽培して、売り上げは幾らか。
△農林水産局長 新規就農者数については、過去5年間で示すと、23年度が12名、24年度が10名、25年度が14名、26年度が7名、27年度が11名となっている。栽培の内容は、ナスやカブ等の露地野菜、高収益が見込まれるイチゴや年間を通して出荷できる春菊などの軟弱野菜、ストックやトルコギキョウ等の切り花を栽培している。売り上げについては、24~26年度までの3年間に就農し、青年就農給付金を受給した18名の売上状況で示すと、3名が500万円以上の売り上げとなっているが、全体の平均では約253万円の売り上げとなっている。
◯山口委員 ここ5年間の新規就農者数が54人というのは少なく、また、売り上げ平均が250万円程度というのも随分低いものである。新規参入の就農者を大事に育てていくことを要望しておく。成功者を多く輩出するためにはどのような支援を行うべきか、ぜひ知恵を出してもらいたい。次に、6次産業化についてであるが、これまで開発された商品の数やその代表的な商品及び支援の内容について、また、26年度の6次産業化の成果等を示されたい。
△農林水産局長 これまでに開発された6次産業化商品の品目数は17品目であり、代表的な商品としては、脇山産のお茶を使った紅茶や、市内産タマネギを使用したソースやペースト、あまおうやアマナツ等の市内産果実を使ったお菓子や飲料水などがある。支援の内容については、試作品の原材料費や加工用器具の購入費用、展示会出展経費の一部助成などの支援を行っている。26年度の成果については、新規の開発商品が3品で、そのうち販売に至った商品は2品である。
◯山口委員 28年度における本市の助成等の計画内容及び今後の商品の開発目標を示されたい。
△農林水産局長 28年度の計画内容については、市内産農畜産物を使用し、新たな商品化に取り組む事業者を支援する市内産農畜産物6次産業化推進事業において、能古島産蜂蜜とアマナツや西区元岡のトマトを使用した加工品の開発等に対する支援を行うこととしており、予算額は389万6,000円である。また、多様な事業者がネットワークを構築して取り組む事業を支援する6次産業化ネットワーク活動交付金事業では、牛乳を使用した新製品の加工場建設事業や加工用種子を生産するための施設整備及び機械購入への助成を国庫補助事業で行うこととしており、予算額は1億2,250万円である。今後の目標については、年間2品程度の開発を目指すこととしている。
◯山口委員 年間2品は大変だと思うが、ぜひ開発に注力されたい。就業人数や生産額に占める6次産業の割合については不明と聞いたが、効果の検証のためにも情報を集めるべきと述べておく。国の補助金について、28年度予算額の中で、どれくらいの割合になっているのか。
△農林水産局長 予算額389万6,000円の市内産農畜産物6次産業化推進事業は、全額市の単独事業である。予算額1億2,250万円の6次産業化ネットワーク活動交付金事業は事業費のおおむね3割を補助するものであり、全額国費による補助事業である。
◯山口委員 国が多くの予算を措置して6次産業化へかじを切っており、国の補助を活用して、補助金額の何倍もの成果があらわれるよう、本市の取り組みが加速されることを期待している。ここで、鹿児島県喜界町における6次産業化の取り組みについて紹介する。喜界島は奄美大島の隣に位置し、過去に火山活動でできた島であると町長から説明を受けた。ここはサトウキビの大生産地で、品質、生産性とも主力商品であるが、そのほかに、桃太郎トマト、メロン、タンカン、マンゴーなど果物の生産性も向上している。特に有名なのが無農薬栽培の国産ゴマで、白ゴマが地域特産品として人気があり、品質がよく、300グラムで2,430円もするが、その製品としては練りゴマ、黒糖ゴマ菓子、ゴマ豆腐、白ゴマドレッシングが人気商品になっている。喜界町営農支援センターが農業後継者育成や生産技術向上の拠点施設になっており、ゴマの製品づくりに欠かせない搾油機などを町が購入し、島の生産者が利用している。視察に行ったときは、新商品の開発を行っている男性が作業をしていたが、これらの機械は数千万円もするものがあり、個々の農家では購入が難しいため、行政の後押しがあったからこそ品種改良や新商品開発に挑戦ができ、今のような国産の7割を生産する特産品にまで成長できたと聞いた。よい商品ができたとしても、それが販売されて収入にならないと何もならない。本市においては、どのような販売ブースで市内産商品として販売されているのか。
△農林水産局長 6次産業化商品の販売場所については、事業者みずからが設置する店舗等に加えて、JA福岡市じょうもんさん市場やJA福岡市東部愛菜市場などの直売所、市役所庁舎1階のユニバーサルカフェ、福岡市漁協が経営する「博多家(ハカタハウス)」などで販売している。また、臨時の販売ブースとして、農林水産まつりやJA福岡市じょうもんさん天神市場などのイベントに出展し、販売している。
◯山口委員 市内産商品が17品目もあるとのことだが、販売チャンネルをふやさなければ消費の拡大は見込めず、買ったことも食べたこともない市民が大変多いのが現状である。生産が少量という点についても、生産量をふやさなければ市民に認知されず、需要をふやさなければ生産も増加させることができないため、底上げをぜひ図られたい。市内産商品は市役所庁舎1階でも販売されている。炒めもんソースは市内産タマネギを使っており、本市にすばらしいこだわりのソースがあるということで、東京にお土産で持っていったところ、ほかのいろいろなメーカーがつくっているドレッシングよりもおいしいと評判であった。価格は410円である。もう1点は小呂島の漁師のしまごはんという商品で、焼きほぐしになっている。漁師の手づくりで、特に漁師のおかみさんが一生懸命つくっているということである。この焼きほぐしも、市役所庁舎1階において540円で販売しているが、販売場所を知らない人が大変多く、そういう意味では販売力が大事である。2年前に制定されたふくおかさん家のうまかもん条例ののぼりがあるが、こののぼりを初めて見たという人が大半ではないかと思う。こののぼりを立てたり、取り扱い店であることを示すステッカーを張っている店があれば、福岡の食を広めるという意味で、利用をぜひお願いしたい。先日の新聞記事に、付加価値をつけて販売した事例が掲載されていた。北海道ではタマネギは1個100円ぐらいで販売されているが、品種改良の結果、体によい成分のケルセチンが普通量の2倍あるタマネギを開発し、200円で販売したところ、大ヒットし、品物が足りないということである。健康に目をつけたところが奏功し、生産者もふだんの倍の収入に喜んでいるとのことである。本市においても、市長が各地でIR説明会などに行くときなど、このふくおかさん家の製品を持っていき、紹介等を行ってはどうか。市議会でも一昨年、ふくおかさん家のうまかもん条例を制定したが、内外を問わず製品を扱っている店や飲食店を紹介しなければ、販売の拡大は見込めない。ふくおかさん家のうまかもん条例では、生産者から消費者まで橋渡しをするのが行政の役割であると規定している。農林水産局から発信して他の部局に製品を紹介しなければ売り上げも期待できないと考えるが、他局での取り組みについて示されたい。
△農林水産局長 ふくおかさん家のうまかもん条例の推進については、関係する部局で構成する連絡会議を設置して、取り組み状況の情報共有を行うなど横断的な連携の強化を図っている。他局での市内産農林水産物の活用については、教育委員会において学校給食での使用拡大に努めたほか、財政局所管のふくおか応援寄付事業における記念品として活用されている。今後とも各局と情報交換しながら、市内産農林水産物の活用を推進していく。
◯山口委員 28年はクルーズ船が約400隻も博多港に寄港する予定と聞いており、乗客も乗務員も食事を船内でとることになるが、クルーズ船の会社や企画会社と交渉し、本市の新鮮な野菜や魚など農水産物を提供できるよう売り込んでもらいたい。他県では既にその取り組みが始まっており、28年度はさまざまな状況に果敢に挑戦し、博多のおいしい食材を国内外に向けて発信し、アウトバウンドに取り組まれたい。また、ベジフルスタジアムのオープンを契機に、今後は海外も大事な輸出の拠点とすべきであり、海外マーケットの拡大にも取り組まれたい。これからの市内産農水産物の発展に向けて、夢と希望が持てるようにするための市長の所見と決意を伺う。
△市長 本市の農水産物の質の高さは国内外ともに認めるところであり、非常に豊かな食というものが本市の魅力になっている。本市におけるコンベンションの開催に当たって、多くの人が福岡は食がおいしいから、福岡であればコンベンションも参加したいと言ってもらえることは、まさに食の力だろうと考えている。農林水産業の振興のためには、それを支える農業者や漁業者の所得の向上を図っていくことや、生産された農林水産物の価値をさらに高める6次産業化に取り組むこととともに、国内外への販売力を強化していくことが大事だと思っている。このため、唐泊の恵比須かきや市内産の花卉については輸出のプロモーションを行うとともに、海外のシェフやバイヤーを本市に招聘し、本市の食材を紹介するなどの海外需要の拡大、関東圏における食のイベントに市内産農林水産物のPRブースを出店するなど、国内外への情報発信に積極的に取り組んでいる。また、2月に開場したベジフルスタジアムにおいては、コールドチェーンの確立が売りの一つであるが、このような取り組みによって安全、安心を市場ブランドとして確立し、国内だけではなく、アジアに向けたプロモーション活動を進めていきたいと考えている。今後とも、農業者や漁業者の所得の向上を目指し、さまざまな機会を捉えて本市の食の魅力を発信するとともに、農林水産物の付加価値を高めて、国内外における新たな市場の開拓などによって農林水産業全体が活性化するように、しっかりと取り組んでいきたい。

福岡市議会議員
山口つよし

公明党 福岡市議団

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